大学施設の内装デザインを3Dで検討する|建築設計事務所との設計協業
- 2 日前
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2026年8月、ある建築設計事務所から、大学施設の内装リノベーションについてご相談をいただきました。
対象となったのは、大学のエントランス、廊下、応接室、会議室など。
室内の計画面積は約150㎡で、デザイン検討・制作期間はおよそ4週間です。
今回ご依頼いただいたのは、
完成した設計図をもとにパースを制作する仕事ではありません。
大学側へのプレゼンテーションに向けて
内装デザインそのものを3Dを用いて検討しながら空間を具体化していくという内容でした。
もともと今回のクライアントの方は、住宅から建築・内装まで幅広く設計をされている建築設計事務所です。
以前から3Dビジュアライゼーションの仕事でご一緒していましたが、「デザインの部分でも一緒に仕事ができそう」というお話をいただいていました。
今回、大学施設のデザイン・プレゼンテーションのご相談を受けた際に私のことを思い出していただいたそうです。
建築設計事務所との設計協業
〇3Dパースではなく、デザイン検討から
今回のご相談の背景には、以前から行っていた3Dサポートがあります。
これまでにも設計事務所の方から、図面をもとにした3Dパース制作のご依頼をいただいていました。
一方で最近はそこから一歩進んで、
デザインの方向性を一緒に考える
コンセプトを整理する
3Dで複数案を比較する
プレゼンテーションに必要な空間を具体化する
といった、設計初期のデザイン検討までご相談いただくことが増えています。
以前から「こういったデザイン業務の場合、どのような契約や進め方になるのか」という話もしていました。
その中で100㎡程度の空間を対象とした3Dデザインサポートを50万円程度からお受けするケースが増えていることもお伝えしていました。
今回の案件も、そうした流れの中でご相談いただいた仕事です。
〇最初にいただいたのは、簡単な図面と資料
最初にいただいた資料は、それほど詳細な設計図ではありませんでした。
簡単な単線の図面、現況写真、空間の方向性についての参考資料。
そして、
お客様から頂いた「なぜ今回リノベーションをするのか」
という要望をまとめた資料です。
この段階では細かな仕上げや家具、壁の形状などがすべて決まっているわけではありません。
そのため、まずはいただいた資料を整理するところから始めました。
今回の空間は、
誰が使うのか
どのような人が訪れるのか
大学としてどのような印象をつくりたいのか
既に決まっている条件は何か
デザインとして検討できる部分はどこか
今回のリノベーションで何を変える必要があるのか
といったことを整理していきます。
〇デザインコンセプトを整理する
資料を読み込みながら、まず今回の施設が「誰のための空間なのか」を整理しました。
学生の方や職員の方だけでなく大学を訪れるゲストや保護者の方などさまざまな人が利用する空間です。
また、今回の施設には海外との関係性や国際的な立ち位置もあります。
そのため、単純に「大学らしい空間」をつくるのではなく誰が訪れどのような印象を受けるのかという視点から大学としての国際的な位置づけや地域との関係性も含めて考える必要があると感じました。
こうした条件を整理したうえで、プロジェクトのデザインコンセプトの核となる部分を言葉にして整理しました。
そのうえで日本や海外の大学・教育施設、公共性の高い施設などから参考となる事例をリサーチしました。
例えば、地域性を感じられる素材を使いたいという要望がありました。
これは単なるマテリアルの選択ではなく、大学の国際的な立ち位置の中で「この場所らしさ」をどのようにつくるか、という問題として捉えたほうがよいと考えました。
またあまりポップになりすぎるよりも、ある程度の格式を持たせながら、外部から入ってきた人が空間の中で少しずつその雰囲気を感じられるようなデザインのほうが、使いやすさと印象のバランスが取りやすいのではないかと考えました。
〇誰のためのデザインなのか
今回のデザインでは、実際に利用する人だけでなく海外から大学側に訪れるゲストの方にどのように受け入れられるかという点も重要でした。
大学施設なので、学長の方などの大学関係者だけでなく学生、ゲスト、学生の保護者など、さまざまな人が利用します。
もちろん打ち合わせを担当される方の好みも重要です。
ただ、それだけを基準にするのではなく、
「国際的な立ち位置を持つ大学の顔として、どのような空間が望ましいのか」
という視点から考える必要があると感じました。
その考え方をクライアントの方と共有しながら、参考事例の写真を見て、
「これはいい」「これは少し違う」「この方向は使えそう」
と一つずつ取捨選択していきます。
そうやって、最初の大まかなデザインの方向性を決めていきました。
〇設計事務所側のデザイン意図も確認する
今回の私のクライアントは建築設計事務所です。
そのため当然ながらクライアント側にも「こういうデザインにしたい」という考えがあります。
そこでこちらから一方的にデザインを決めるのではなく、
「設計事務所として、今回どのような空間をつくりたいと考えているのか」
という部分もヒアリングしました。
その後クライアントから「このような方向性でデザインを検討してほしい」というPDFの資料をいただきました。
5枚程度の資料でしたが、そこには今回のプロジェクトについてのデザインの方向性が整理されていました。
ここで改めて、最初に整理したコンセプトとクライアント側が考えている方向性にズレがないかを確認します。
またその方向性が実際の大学側のクライアントにも受け入れられそうかという点についても検討しました。
そこから具体的な3Dデザインの検討を始めました。
〇エントランスは、少しポップに
エントランスは、応接室や会議室とは少し考え方を変えました。
学生やゲスト、学生のご家族など、さまざまな人が訪れる場所なので、あまり格式を高くしすぎると使いにくい空間になる可能性があります。
そこで基本的にはモダンな方向性を保ちながら、少しポップさを加えることにしました。
具体的には、
ルーバー
市松模様
壁面の形状
展示に対応できるパネル
外部からの視線を調整する要素
などを組み合わせながら複数のデザインを検討しました。
3D上で形状や素材を変えながら、それぞれの見え方を比較します。
今回は単に完成イメージをつくるだけではなく、簡単な平面図や展開図程度の情報も含めながら、デザイン案として成立するところまで具体化することを意識しました。
〇応接室と会議室は、よりプロフェッショナルに
一方、応接室と会議室はエントランスよりも落ち着いたプロフェッショナルな空間として考えました。
その中でも全体が硬くなりすぎないよう、比較的優しい色合いを使いながら天井には木質系のマテリアルを取り入れています。
ただし、木を使えばよいという単純な話ではありません。
内装制限などの条件も考慮しながら、どこにどのように木の要素を配置すると空間として成立するのかを検討しました。
また、応接室と会議室については、それぞれ複数のデザイン案を作成しました。
色、形状、化粧棚などの違いによって、
どのように見えるか
どこに視線が集まるか
どのような印象になるか
どのように使えるか
を比較できるようにしています。
一つの完成形を最初から決めるのではなく、複数の案を比較しながらクライアントの方と一緒に方向性を絞っていきます。
〇3Dで検討して、またデザインを修正する
今回の仕事で3Dを使う目的は、きれいなCGを納品することだけではありません。
デザインを考えるために3Dを使っています。
実際に3Dにすると、図面や参考写真だけでは分からなかったことが見えてきます。
空間の広がり方。
家具とのスケール感。
壁面の見え方。
素材の組み合わせ。
視線の抜け。
照明や天井の構成。
それらを確認しながら、必要であればデザインを変更します。
そして、変更したものを再び3Dで確認します。
今回も、クライアントとの打ち合わせ前に何度もこの作業を繰り返しました。
つまり、
考える → 3Dにする → 確認する → 修正する
というプロセスそのものが、今回のデザイン業務の一部です。
〇約4週間で、デザイン検討からプレゼンテーションまで
今回の4週間では、最初にいただいた資料の整理から始まりデザインコンセプトの検討、参考事例のリサーチ、方向性の整理、複数案のデザイン検討、3Dでの検証、クライアントとの打ち合わせを繰り返しながらプレゼンテーションに向けて空間を具体化していきました。
その過程でエントランス2案、応接室2案、会議室3案、廊下1案など場所ごとに複数のデザインを検討しました。
最終的な成果物としては、
3Dパース 約25枚
アニメーション 1本
デザイン検討用イメージ 約5枚
その他、検討段階で作成した3Dデザイン案
といった内容になりました。
最終的な納品物だけを見ると「25枚のパース」という数字になります。
ただ、今回の仕事ではパースを制作することだけが目的ではありません。
その前段階でどのようなデザインが適切なのかを考え複数の案をつくり3Dで空間として確認し、クライアントと方向性を確認しながら修正していくという検討作業に多くの時間を使っています。
どの案を採用するか。
どの素材を使うか。
どの形状が適切か。
どこまで格式を持たせるか。
どのような人をターゲットとして考えるか。
そうした検討を行ったうえで、必要なものを3Dとして具体化しています。
今回の業務は、単純な3Dパース制作とは異なりデザイン検討からプレゼンテーション用の3D制作までを一連の業務として行いました。
そのため制作枚数だけでは単純に比較できない内容でしたがクライアントの方からは、短期間でデザイン検討と3Dによる具体化を並行して進められた点を評価していただきました。
〇デザイン検討そのものが、そのまま採用された
今回、特に印象的だったのは私が検討したデザインや3Dが、大きく変更されることなく、そのまま採用されたことです。
もちろんクライアントの方との打ち合わせの中で調整は行っています。
ただ、最初にコンセプトや要件を整理しクライアントの考えている方向性を確認したうえでデザインを進めたため、後から大きく方向を変える必要はありませんでした。
クライアントの方からは、
「こんなに早く、このクオリティでここまでデザイン検討してもらえるのは助かった」
と言っていただきました。
また最初は少し高いかなと思っていたものの実際のボリュームを見て、この内容なら納得できるという評価もいただきました。
〇「パースをつくる」から「空間を一緒に考える」へ
完成した図面を受け取り、それを3Dにするご相談ではなく、
最初の資料を読み、要件を整理する。
プロジェクトのコンセプトを考える。
参考事例をリサーチする。
クライアントの方と方向性を確認する。
そこからデザインを考え、3Dで空間として確認する。
そして、必要であればまたデザインを修正する。
今回のような仕事では、
3Dは最終成果物というよりも空間を考えるための設計ツールとして使っています。
建築設計事務所の方がすでに設計を進めている場合でも、
「コンセプトはあるけれど、まだ空間として具体化できていない」
「デザインの方向性を複数検討したい」
「大学や企業などのお客様へのプレゼンテーションに向けてもう一段デザインを詰めたい」
といった段階から、一緒に検討することができます。
Architectural Solutionsでは3Dビジュアライゼーションだけではなく
3Dを使った空間デザインを通して
他の建築設計事務所との設計協業設計協業にも取り組んでいます。
空間を考えながらデザインし、そのデザインを3Dによって具体化する。
今回の大学施設のプロジェクトは、そうした仕事の一例となりました。

