【事例】選ばれるクリニックはデザインも違う。「やり過ぎないガーリー」が集客力を上げた女性クリニック内装設計の裏側
- 5月13日
- 読了時間: 8分
更新日:5月29日
「センスが良いから」ではなく「課題を解決するために」。
今回は、先日お手伝いさせていただいた女性クリニックの内装デザイン提案を例に、私たちがどのような論理でデザインを組み立てていったのか、その舞台裏をご紹介します。
既存の「ロッジ風」が抱えていた課題
リニューアル前のクリニックは、木材をふんだんに使用した、温かみのあるロッジ風のデザインでした。しかし、今回のターゲットは「若い女性層」。
現代の感覚では、茶色が強い木質感は「重厚さ」や「時代」を表現してしまうリスクがありました。
患者の方から選ばれるクリニックはデザインも違うかと思います。
特に女性クリニックという、患者様が少しナーバスになりやすい場所において、ロッジ風の重厚さは、払拭したい「不安感」を助長してしまう可能性があったのです。

「コンセプトは、やり過ぎないガーリーな優しい空間」
このひと言が決まった瞬間に、デザインの9割は決まっていました。
今回の記事では、建築デザイン事務所様からご依頼いただいた女性クリニックの内装リノベーションについて、なぜこのデザインになったのかという判断のプロセスを中心にお伝えします。
コンセプト決定:アメリカ西海岸の爽やかさを取り入れる
そこで私たちが提案したのは、「やりすぎないガーリーな優しい空間」です。
豪華絢爛な装飾で圧倒するのではなく、アメリカ西海岸のような、爽やかでクリーンな空気が流れる空間を目指しました。

最初の分岐点——クリーンに振るか、豪華に振るか
女性向けの空間をデザインするとき、最初に直面する問いがあります。
「清潔感・素朴さ」の方向に振るのか、「豪華絢爛」の方向に振るのか。
美容クリニックや美容サロンのデザインというと、つい高級感や華やかさをイメージしがちです。
しかし今回のターゲット層は若い女性。
求められているのは、「特別感」よりも「親しみやすさ」でした。
アメリカ西海岸のような爽やかさ、パステルカラーのような柔らかさ、少しレトロでかわいらしい照明——そういうイメージの重なりが、ヒアリングの中から見えてきました。
豪華に振ることも技術的には可能です。
しかしそれは、このクリニックが届けたい空気感ではなかった。だから最初の分岐点で「やり過ぎないガーリー」という方向に、迷わず振り切りました。
女性クリニックは、来院するだけで少しナーバスになりやすい空間です。
検査や診察への緊張、慣れない雰囲気への不安。
その心理的なハードルを下げるために、空間はできる限り「やわらかく」「親しみやすく」ある必要があります。
ロッジ的な重厚感は、その緊張感を払拭するどころか、むしろ強化してしまいかねない。
だから「少し直す」ではなく「方向性ごと変える」という判断をしました。
既存の雰囲気を残しながら調整するという選択肢は、この案件には存在しませんでした。
今回は、
既存の構造を活かした「増し貼り」の範囲内でのリニューアルという制約がありました。
そのため、以下の点に注力し、コストとデザインのバランスを最適化しました。
制約を逆手に取った「仕様選定」
素材の取捨選択: 塗装、クロス、タイルのどれをどこに使うか。既存利用を前提とした形状検討を行い、効率的かつ効果的なリフレッシュを狙いました。
家具・照明の再選定: 年代を感じさせていた既存家具を一新。
真鍮やウッドなど、柔らかさと可愛らしさを両立できる素材をセレクトし、空間全体のトーンを整えました。
「増し貼り」という制約の中でどう設計したか
とはいえ、リノベーションには制約があります。
あまり目新しいデザインは求められていないということでした。
塗装か、クロスか、タイルか——仕上げ材の選択と、その形状の組み合わせで、どこまで「別の空間」に見せられるか。そこが設計の腕の見せどころです。
さらに既存の家具も年代を感じさせるものが多く、内装を刷新しても家具が残ると全体の印象が崩れてしまいます。

内装デザインと並行して、照明・家具・什器をすべて選定し直し、空間として統一感を持たせることが不可欠でした。
素材も形状も、コンセプトである「やり過ぎないガーリー」に照らし合わせながら一つひとつ選んでいきました。
角張ったものは使わない。
丸みのあるフォルムを基本とし、真鍮やウッドといった素材で、かわいらしさの中に少しだけ上質さを滲ませる。そういう積み上げ方です。
平面図だけでは整理しきれない部分を補うため、ASDOでは日常的に3Dを用いた空間整理や視覚化サポートも行っています。「図面はある。でも、その先の空間デザインがまだ固まらない」という方向けに、Spatial Design Support(SDS)についてこちらで紹介しています。
選ばれるクリニックはデザインも違う
なぜそのデザインなのか?
今回の設計で意識したのは、空間ごとにデザインの密度を変えるということです。
受付・待合はコンセプトに忠実にまとめることができ、比較的スムーズに方向性が固まりました。しかしトイレは別の考え方が必要でした。
なぜ空間ごとにデザインの「濃度」を変えたのか

検査も行うトイレという空間は、患者の方が最も緊張しやすい場所の一つです。
だからこそここは、他の空間よりもデザインの濃度を意図的に上げました。
ワントーン深みのある色を使い、「少しやり過ぎかな」というところから始めて、全体のバランスに合わせながら落ち着かせていく。
そのプロセスで生まれた空間です。

逆に中待合は、あえてシンプルに仕上げました。
エントランスから受付へと導かれてくる流れの中で、ここが過剰にデザインされていると空間全体がうるさくなってしまう。
引くことで、ほかの空間が際立つ。
デザインの濃淡を意図的にコントロールすることが、空間全体の完成度を上げる判断でした。
什器(家具)のデザインにおいても、論理的な裏付けを大切にしました。
心理的な安心感: 角を落とした丸みのある形状。
動線の最適化: レイアウトに基づき、機能的な配置を徹底。
アイキャッチ: 患者様の動線上に、可愛らしいショーケースをデザイン。一目見てコンセプトが伝わるアイコンとしての役割を持たせました。
機能を形にする「什器デザイン」

動線上に「かわいらしさ」を置く
——什器デザインという視点
機能面でも、空間の使われ方から逆算した設計を行いました。
来院した患者の方が自然に視線を向ける動線上に、真鍮とウッドを組み合わせたショーケースをデザイン・配置しています。商品の陳列と空間の演出を兼ねながら、コンセプトである「やり過ぎないガーリー」を、視覚的に最初に感じ取れる場所に置く。
形状も角を持たせず、丸みを意識した機能的なレイアウト。
使いやすさとデザインが両立することで、空間としての説得力が増します。
最終的に、
これらの意図をすべて言語化し、3Dビジュアルとコンセプト資料としてまとめました。
「なんとなく可愛い」ではなく、「ターゲットの不安を和らげるために、この色と形を選んだ」という納得感のある説明を行うことで、クライアント様にも深く共感いただき、ご契約へと至りました。
ASDOでは、単に空間を“綺麗に見せる”のではなく、
「誰に」「どんな心理変化を与え」「どう意思決定していただくか」
まで含めて、設計初期から空間整理を行っています。
図面化前のヒアリングやコンセプト整理、3Dを用いた方向性検討をどのように進めているのかは、こちらの記事でも詳しくまとめています。
デザインの言語化がプレゼンを動かした
なぜそのデザインなのか?
なぜこの色なのか、なぜこの素材なのか、なぜこの配置なのか——
設計の判断をひとつひとつ言語化し、クライアント様が「納得して決断できる状態」を作ることを意識しました。
「一目見てコンセプトが伝わる」ということと、「なぜそうなのかが説明できる」ということ。この二つが揃ったとき、プレゼンテーションは単なる提案ではなく、クライアントとの対話になります。
ご契約をいただけたのは、デザインそのものだけでなく、そのデザインに至った論拠が伝わったからだと思っています。
デザインの「なぜ」を突き詰めると、そこには必ずクライアント様の想いと、利用者様のニーズに応えるための論理が存在します。
「なぜこのデザインか」を言葉にすることが、信頼になる
デザインは、見た目だけで完結しません。
なぜその色なのか。なぜその素材なのか。なぜその配置なのか。
空間の印象は、設計者の判断の積み重ねによって生まれます。
ASDOでは、建築士による設計と3D visualizationを通して、コンセプトだけで終わらない「根拠のある空間提案」を行っています。
「イメージはあるが、それを形にする言葉と根拠が欲しい」
そんな場面があれば、ぜひご相談ください。
文京区・台東区周辺でオフィス内装・建築設計をご検討の方へ
設計のご相談から貴社のデザインサポートや、初期段階から3Dを活用した空間の完成形を共有しながら進める「手戻りのない設計支援」等を行っています。
お近くであれば、直接お会いしての打ち合わせも可能です。
AIによるスピード検討と、建築士による正確な視覚化。 この両立で「プレゼンの質」を上げたい方は、まずはこちらのASDO サービス案内ページ をご覧ください。

